“熱(あ)” の例文
二時間ほどすると、ひょろりと長い山川の身体が、すこしばかりの骨の集積になって、熱(あ)つ熱(あ)つのまま、みなのところへ戻ってきた。
蝶の絵 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
失敬な奴だ。嘘(うそ)をつきゃあがった。それから下女が膳(ぜん)を持って来た。部屋は熱(あ)つかったが、飯は下宿のよりも大分旨(うま)かった。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
地獄変相図の世界国ノアの洪水、ソファの下から這出(はいだ)した蜘蛛蟹(くもがに)のお化け。熱(あ)つや苦しや、通風の悪い残暑の人いきれ。
二科狂想行進曲 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
破(やぶ)れ障子(しょうじ)に強い風が当ったような音をたてて彼は極(ご)く熱(あ)つのげんのしょうこを啜(すす)った。近来手強(てごわ)い事件がないせいか、どうも腸の工合がよろしくない。
鞄らしくない鞄 (新字新仮名) / 海野十三(著)
一つ火箸で挾んで、其の生々しい腕へしや付けたつたんや……さうすると何うや、家根の上で、熱(あ)つツ……
太政官 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
私は眠られないのと熱(あ)つ苦しいとで、床を出ましてしばらく長火鉢の傍(そば)でマッチで煙草を喫(す)っていましたが、外へ出て見る気になり寝衣(ねまき)のままフイと路地に飛び出しました。
女難 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
「どうも、権門、富貴の御馳走酒より、自腹の熱(あ)つ燗がこてえられねえな」
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
まだ表紙を開きませぬうちから顔が熱(あ)つくなるように思いました。
押絵の奇蹟 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「あッ! 熱(あ)つつつ——」
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
渇仰(かつぎやう)熱(あ)つく跪(ひざま)づき
全都覚醒賦 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
とは云うものの少々熱い。毛衣では全く熱(あ)つ過ぎる。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)