熊胆くまのい)” の例文
旧字:熊膽
けもの雪をさけて他国へ去るもありさらざるもあり、うごかずして雪中に穴居けつきよするはくまのみ也。熊胆くまのいは越後を上ひんとす、雪中の熊胆はことさらにあたひたつとし。
その証拠には、例の唯一の武器たる杖槍つえやりも、ちゃんと肩にかついでいるし、携帯の荷物も、懐中に入れた精製の熊胆くまのいも、決して取落してはいないのです。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
その実は彼等のかんがえに、緒方の書生に解剖して貰えば無疵むきず熊胆くまのいが取れると云うことを知て居るものだから、解剖に託して熊胆くまのいが出るやいなかえって仕舞たと云う事がチャンとわかったから
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
やや暫くした瞬間に、ハッと気がついて、例の責任感がこみ上げて来ると矢もたても堪らず、土産物屋みやげものや熊胆くまのいをかっぱらうようにさらって、走り出しました。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「あの獣皮屋けがわやへ、熊胆くまのいのいいところを一くくりあつらえて、昨夜ゆうべのうちに代金まで渡しておいたが、出がけに忘れてしまった、済まねえが友さん、ひとつ取って来てくれねえか」
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)