為合しあわ)” の例文
旧字:爲合
そういう事をお話なすって下さると我々青年は為合しあわせなのですが。ほんの片端かたはしよろしいのです。手掛りを与えて下されば宜しいのです
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「なんだが菜穂子さんはあんまり為合しあわせそうにも見えなかったな」と明は考え続けながら、有楽町駅の方へ足を向け出した。
菜穂子 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
そこで己が言って聞かせるが、そんな遠慮は決していらない。お前が別れて行ってくれれば、己は為合しあわせだ。己の自信が傷つけられずに済むのだ。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
自分は恋しい妻をもうくしたが、白髪になるまで二人ともすこやかで、その妻の声を聞くことの出来る人は何と為合しあわせな人だろう、うらやましいことだ、というので
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
今の月が上弦だろうが下弦げげんだろうが、今夜がクリスマスだろうが、新年だろうが、外の人間が為合しあわせだろうが、不為合せだろうが構わないという風でいるのね。
(十分の敬意をもって、ゾフィイの手に接吻せっぷんす。)今日こんにちは色々お話を承って為合しあわせを致しました。
わたくし共は為合しあわせです。
そして少数の人がどこかで読んで、自分と同じような感じをしてくれるものがあったら、為合しあわせだと、心のずっと奥の方で思っているのである。
あそび (新字新仮名) / 森鴎外(著)
己は大学のベルナルドさんの処へ行ったのだ。為合しあわせにあの人は本当の事を言ってくれた。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
「あの方さえお為合しあわせになっていて下されば、わたくしは此のままちてもいい。」
曠野 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
しかしまたしては、「やっぱりそうなった方が、あいつのためには為合しあわせかも知れない、どうせ病身なのだから」と思っては自分で自分をなだめて見るのである。そのうち寐入ねいってしまった。
(新字新仮名) / ライネル・マリア・リルケ(著)
よい方に出逢であいましたのは、わたしどもの為合しあわせでございます。そこへ往って休みましょう。どうぞ藁や薦を
山椒大夫 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
多分近頃自分が極端に疲労していて、よしや折々気分がくなったように思っても疲労が真に直る事がないからであろう。こんなに疲労しているのは、却て自分の為合しあわせである。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
為合しあわせな事には、好い娘だと人も云って下さるあの子だから、どうか堅気な人に遣りたいと思っても、わたしと云う親があるので、誰も貰おうと云ってくれぬ。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
「よく話してきかせてってくれ給え。まあ、套管針とうかんしんなんぞを立てられなくて為合しあわせだった」
カズイスチカ (新字新仮名) / 森鴎外(著)
お玉は物をわきまえるようになってから、若し身に為合しあわせが向いて来たら、お父っさんをああもして上げたい、こうもして上げたいと、色々に思っても見たが、今目の前に見るように
(新字新仮名) / 森鴎外(著)