瀑壺たきつぼ)” の例文
が、折角せっかくたのみとあってればなんとか便宜べんぎはかってげずばなるまい。かく母人ははびと瀑壺たきつぼのところへれてまいるがよかろう……。
箒川はうきがわの谷もかなりに上流まで行つた。大谷だいやの谷もあの深潭しんたんから華厳の瀑壺たきつぼまで行つた。吾妻川の谷にも深く入つて行つた。
水源を思ふ (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
その暇に犬は水を垂らしながら、瀑壺たきつぼの外へ躍り上って、洞穴の方へ逃げて行ってしまった。
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
わたくし単身たんしん瀑壺たきつぼそばとうってうえのおみやもうで、はは願望ねがいをかなえさせてくださるようおたのみしました。
谷川の上流にはたきがあって、そのまた瀑のあたりには年中桃の花が開いていた。十六人の女たちは、朝毎にこの瀑壺たきつぼへ行って、桃花とうかにおいひたした水にはだを洗うのが常であった。
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
たった一人ひとりで、そんな山奥やまおく瀑壺たきつぼへりくらすことになって、さびしくはなかったかとっしゃるか……。ちっともさびしいだの、気味きみがわるいだのということはございませぬ。
彼は熊笹くまざさを押し分けながら、桃の落花をたたえている、すぐ下の瀑壺たきつぼへ下りようとした。その時彼の眼は思いがけなく、水を浴びている××××××黒いけものが動いているのを見た。
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)