こぎ)” の例文
八人の船子ふなこを備えたるはしけただちにこぎ寄せたり。乗客は前後を争いて飛移れり。学生とその友とはややりて出入口にあらわれたり。
取舵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
こぎ手はすっかり退屈して、かわるがわる居眠りをする。ただひとり、銛師の北原だけは、暇さえあれば、沼の岸でひろった硬い泥炭の塊でコツコツと銛を作っていた。
地底獣国 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
楼婢ろうひを介して車をたのんだが、深更しんこう仮托かまけて応じてくれ無い、止むを得ず雨をついて、寂莫じゃくばくたる長堤をようやく城内までこぎつけ、藤堂采女とうどううねめ玉置小平太たまおきこへいたなど云う、藩政時分の家老屋敷の並んでいる
枯尾花 (新字新仮名) / 関根黙庵(著)
二人はかじきに雪をこぎつゝ(雪にあゆむを里言にこぐといふ)たがひこゑをかけてたすけあひからうじてたふげこえけるに、商人あきひと農夫のうふにいふやう、今日の晴天に柏崎かしはざきまでは何ともおもはざりしゆゑ弁当べんたうをもたず
それでもなお近郷きんごうでは屈指の分限者ぶげんじゃに相違ないと云う事、初子の父の栗原は彼の母の異腹はらちがいの弟で、政治家として今日の位置にこぎつけるまでには、一方ひとかたならず野村の父の世話になっていると云う事
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
成るほど一理屈あるテ(大)サア一理屈あると仰有るからは貴方もう半信半疑と云う所までこぎつけました貴方が半信半疑と来れば此方の者です私しも是だけ発明した時はだ半信半疑で有たのです
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
しづかにこぎやれ 勘太殿かんたどの
桜さく島:春のかはたれ (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
櫓声ろせいして高らかに唱連うたいつれて、越中まいを満載したる五六そうの船はこぎ寄せたり。
取舵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
二人はかじきに雪をこぎつゝ(雪にあゆむを里言にこぐといふ)たがひこゑをかけてたすけあひからうじてたふげこえけるに、商人あきひと農夫のうふにいふやう、今日の晴天に柏崎かしはざきまでは何ともおもはざりしゆゑ弁当べんたうをもたず