渡津海わたつみ)” の例文
鱗に、爪に、角に、一糸掛けない白身はくしんいだかれ包まれて、渡津海わたつみの広さを散歩しても、あえて世にはばかる事はない。誰の目にも触れない。人はゆびさしをせん。
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
肉落ちて血色なく、死人の如き面なれど、これのみは年も病もえ奪はざりけん、暗黒にして、渡津海わたつみのそこひなきにも譬へつべき瞳は、磁石の鐵を吸ふ如く、我面に注がれたり。
渡津海わたつみ豊旗雲とよはたぐも入日いりひさし今夜こよひ月夜つくよ清明あきらけくこそ 〔巻一・一五〕 天智天皇
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
余光よくわうさへなくなりゆきし渡津海わたつみにミニコイ嶋の灯台の見ゆ
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)