洞穴うつろ)” の例文
山毛欅ぶな洞穴うつろからびだしたひとりの怪人かいじんが、電火でんかのごときすばやさで、かれの胸板むないた敢然かんぜんとついてきた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
このあいだうちから、千ねん山毛欅ぶな洞穴うつろの中にかくれて、毎朝、喬木きょうぼくの上によじあがり神刑しんけいにかけられている忍剣にんけんの口へ、食餌しょくじをはこんでいたさると見えたのは、まったく、竹童ちくどうなのであった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
見ると、その千ねん山毛欅ぶなッこに、石橋山いしばしやま頼朝よりともが身をかくしたような洞穴うつろがある。そのまッくらな洞穴のなかで、なにか、コトリと音がした。コトコトとかすかにきこえたものがあった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)