沙金しゃきん)” の例文
おれは、悪事をつむに従って、ますます沙金しゃきん愛着あいじゃくを感じて来た。人を殺すのも、盗みをするのも、みんなあの女ゆえである。
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
女は、白地にうす紫の模様のあるきぬを着て、市女笠いちめがさ被衣かずきをかけているが、声と言い、物ごしと言い、紛れもない沙金しゃきんである。
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
家の中から、たちまちけたたましい女の声が、猪熊いのくまおじの声に交じって、彼の耳を貫ぬいた。沙金しゃきんなら、捨ててはおけない。
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)