水無みなし)” の例文
飛騨ひだ水無みなし神社宮司ぐうじを拝命すると間もなく、十一月十七日の行幸の朝に神田橋外まで御通輦ごつうれんを拝しに行くと言って、浅草左衛門町さえもんちょうを出たぎりだ。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
そのヒダ王朝の嫡流の最後の人を祀ったものらしく、水無みなし神社は身無みなし神社の意であろうと私は解しております。
飛騨の顔 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
ところが、世間の思惑と葬式の資金に困った平兵衛は、気も顛倒していたものとみえて、普段あれほど恐れおののいていたこの水無みなし井戸へ、おりんのむくろを投げ込もうと決心したのである。
父は平田篤胤あつたねの門人であったというし、維新の際には家を忘れて国事に奔走したというし、飛騨ひだの国にある水無みなし神社の宮司にもなったというし
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ヒダ自身の第一の神社は水無みなし神社ですが、これはどうやら白鳥になって飛び去ってこの世から身体を失った人、実際はヒダへ追いつめられて負けて死んでその首をミヤコへ持ち去られてしまった人
飛騨の顔 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
その半蔵は飛騨の水無みなし神社宮司として赴任して行ってから、二度ほど馬籠へ顔を見せたぎりだ。一度は娘お粂が木曾福島の植松家へとついで行った時。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
飛騨ひだ国大野郡、国幣小社、水無みなし神社、俗に一の宮はこの半蔵を待ち受けているところだ。東京から中仙道なかせんどうを通り、木曾路きそじを経て、美濃みのの中津川まで八十六里余。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
それを彼は思い出して、あの水無みなし神社の宮司として飛騨の山中に籠っていた頃が父の生涯の中でも寂しい時であり、なつかしみの多い時ででもあることを想って見た。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
そのいずれもが剣客遠藤えんどう五平次の教えを受けた手利てききの人たちであるが、福島の祭りの晩にまぎれて重職植松菖助うえまつしょうすけ水無みなし神社分社からの帰りみちを要撃し、その首級をげた。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)