死装束しにしょうぞく)” の例文
旧字:死裝束
「長左衛門(宗治のこと)。いま仔細は聞いたが、お前が死ぬには及ばぬことだ。この兄が代ってあげる。死装束しにしょうぞくはわしに譲れ」
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その都度死装束しにしょうぞくとして身装みなりを繕ったろう、清い襦袢じゅばんくれないの袂は、ちらちらと蝶の中に交って、あれば、おのが肩を打ち、且つ胸のあたりを払っていたが、たちまち顔をしかめて唇を曲げた。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
美男であり、勝入の姫とのあいだには、ほのかな恋のうわさまで立って夫婦ひとつになった彼として——きょうの死装束しにしょうぞくは、あまりにも悽愴せいそうすぎる。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
元船もとぶね乗棄のりすてて、魔国まこくとこゝを覚悟して、死装束しにしょうぞくに、髪を撫着なでつけ、衣類を着換きかへ、羽織を着て、ひもを結んで、てん/″\が一腰ひとこしづゝたしなみの脇差わきざしをさして上陸あがつたけれど、うえかつゑた上、毒に当つて
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
白い死装束しにしょうぞくの人を乗せてただよい待つ小舟と、あかの小旗をひるがえした検使舟とは、ようやくいま、この満々たる水上の中心で相会おうとしていた。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
時刻が近づくと、城主小三郎は、まだ若い夫人やその乳のみ子までに死装束しにしょうぞくを着せ、弟の彦之助、その他、一族とともに、広間を死の座として居流れていた。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして、黄昏たそがれとなれば、物々しくも扮装いでたちにかかった。彼女の死装束しにしょうぞくとする白晒布しろさらしの肌着には、紋散らしのように、諸国にわたる神社仏閣の印がしてある。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
やがて、伴われて、楚々そそとしてそこへはいって来たのは、月夜の衣裳には余りに寒い! 白絹の小袖に、白絹のかいどり、帯までが白い——死装束しにしょうぞく麗人れいじんであった。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「さだめし囚衣もあかじみていよう。死装束しにしょうぞくに、これ与えよ」
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これもかれに、きょうの死装束しにしょうぞくを、よろわせた一因なのだ。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
死装束しにしょうぞくでこの屋敷の一間ひとまにつつしんでいたものに違いない。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)