そのおりの中幕なかまくに、喜多村が新しい演出ぶりを試みた、たしか『白樺しらかば』掲載の、武者小路実篤むしゃのこうじさねあつ氏の一幕ものであったかと思う。
マダム貞奴 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
が、そんな困難に辟易へきえきするようでは、上は柿本人麻呂かきのもとひとまろからしも武者小路実篤むしゃのこうじさねあつに至る語彙ごいの豊富を誇っていたのもことごとく空威張からいばりになってしまう。
文章 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
わずかに島崎藤村、谷崎潤一郎、武者小路実篤むしゃのこうじさねあつ、佐藤春夫、室生犀星むろうさいせい位であり、そして真の芸術至上主義者として、自殺した芥川龍之介、志賀直哉なおや等を数えるにすぎないだろう。
詩の原理 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
生田長江いくたちょうこうが『新小説』の誌上に「自然主義前派の跳梁ちょうりょう」という題で、白樺派しらかばは——というよりは、主として武者小路実篤むしゃのこうじさねあつ氏を目がけてすさまじい攻撃の矢を放ったのは、すこぶる威勢のいいものだったので
文壇昔ばなし (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
けれどもあたしたちの代弁者だいべんしゃうそのように一人もいないじゃないの? 倉田百三くらたひゃくぞう菊池寛きくちかん久米正雄くめまさお武者小路実篤むしゃのこうじさねあつ里見弴さとみとん佐藤春夫さとうはるお吉田絃二郎よしだげんじろう野上弥生のがみやよい、——一人残らず盲目めくらなのよ。
文放古 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
武者小路実篤むしゃのこうじさねあつを理解している。カアル・マルクスを理解している。しかしそれが何になるんだ? 彼等は猛烈な恋愛を知らない。猛烈な創造の歓喜を知らない。猛烈な道徳的情熱を知らない。
一夕話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)