此宵こよい)” の例文
あゝわれ此宵こよい、わが肩によりかゝる、若き男の胸こそ欲しけれ。ロマンチツクなる事やなぎのかげにも優りたるわが心のものうき疲れを、かの人は吸ふべきに。
此宵こよい宮詣みやまいりは一生を通じて詣って来たようなものだ。お身と我らの倖せをことほぐためにもかった。」
津の国人 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
お初、そう答える外にない——彼女の此宵こよいの計画は、どんな相手にも、歯から外へは出せないのだ。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
と新太郎君は殊勝しゅしょうらしいところを見せた。所謂いわゆるガヷナーの前を繕うのが癖だけれど、此宵こよいは必ずしも猫でない。こんなにまで考えてくれるかと思うと、身にみて涙ぐんで来た。
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
しかし、今、此宵こよいの月に角笛は響かず。キーツは憧憬の眼を月に向けた。
霊的本能主義 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)