正気せいき)” の例文
旧字:正氣
吾々われ/\が十六七のとき文天祥ぶんてんしやう正気せいきの歌などにかぶれて、ひそかに慷慨かうがい家列伝に編入してもらひたい希望で作つたものと同程度の出来栄できばえである。
艇長の遺書と中佐の詩 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
あのうたた気持きもち——正気せいきのあるような、またいような、んともえぬうつらうつらした気分きぶんなのでございます。
水戸の学問と言えば、少年時代からの彼が心をひかれたものであり、あの藤田東湖の『正気せいきの歌』なぞを好んで諳誦あんしょうしたころの心は今だに忘れられずにある。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
よ、東海とうかいそらあけて、きょくじつたかくかがやけば、天地てんち正気せいきはつらつと、希望きぼうはおどる大八島おおやしま……。」
日の当たる門 (新字新仮名) / 小川未明(著)
われわれは彼がどんな師匠に就いておしえを受けたか知らないが、彼はふだん「男女の区別」を厳守し、かつまた異端を排斥する正気せいきがあった。たとえば尼、偽毛唐のるい
阿Q正伝 (新字新仮名) / 魯迅(著)
自分では何の症状も覚えず、つねにゆがめられざる正気せいき昭々しょうしょうまなこをもって、世をること、国を思うこと、忘れぬつもりではいても……。さて、傍目はためには如何いかがなものやら
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「昔、支那に、文天祥という人があった。その人の詩に、正気せいきの歌というのがある」
三人の相馬大作 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
爾のしろしめすごとくわが夫に天地の正気せいきあつまるあり、その壮宏たる富嶽のごとく、そのかんばしきこと万朶まんだの桜のごとく、そのしゅうそのほう万国ともにたぐいし難し、我如何いかにしてこの夫を欺くべけんや
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
常陸帯ひたちおび』を書き『回天詩史かいてんしし』を書いた藤田東湖はこの水戸をささえる主要な人物の一人ひとりとして、少年時代の半蔵の目にも映じたのである。あの『正気せいきの歌』なぞを諳誦あんしょうした時の心は変わらずにある。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)