欣求ごんぐ)” の例文
現界の富強をこいねがわず、神界の福楽を欣求ごんぐする鼻をたっとぶあつまりは、崇高幽玄、霊物を照破する鼻に帰依して財宝身命を捧げました。
鼻の表現 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
寺男としては二人前も三人前もらくに働き、彫刻師としては、稚拙極まる菩薩を素材の中から湧出せしめて、欣求ごんぐの志をあらわす。
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
けだしコン吉が手籠の編目に、三昧の鼻の先を突っ込んで寝こけているのは、いまや大願成就して、欣求ごんぐ南方極楽浄土コオト・ダジュウルにおもむくその途中にほかならぬ。
藝術を捨てたのではなかつたが、不治の病気を抱いて、死に直面した平尾氏は、藝術よりもむしろ神の救ひを欣求ごんぐしました。で、京都に来て同志社神学校に入りました。
恋妻であり敵であった (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
極楽に生れようという、欣求ごんぐもなかった。ただそこに、晴々した精進の心があるばかりであった。
恩讐の彼方に (新字新仮名) / 菊池寛(著)
若しうそと云ふことから言へば、彼等の作品はうそばかりである。彼等は彼等自身と共に世間をあざむいてゐたと言つてもい。しかし善や美に対する欣求ごんぐは彼等の作品に残つてゐる。
澄江堂雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
真の音楽的なものを求めんとする欣求ごんぐの姿であると言っても差支えのないものであろう。
が、これは現実生活全般の否定、死後の生活の欣求ごんぐを意味するのではない。
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
一歳ひととせ法勝寺御幸の節、郎等一人六条の判官はうぐわんが手のものに搦められしを、厭離おんり牙種げしゆ欣求ごんぐ胞葉はうえふとして、大治二年の十月十一日拙き和歌の御感に預り、忝なくも勅禄には朝日丸の御佩刀おんはかせをたまはり
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
緑にはたや紫に、愛の、欣求ごんぐの、信のつぶ
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
生をぬすまんがために、表面追従するだけで、生の拡大と鞏固きょうことを欣求ごんぐするような英雄は一人も来やしない。
一心に能を渇仰かつごうし、欣求ごんぐしつつある。……技巧から魂へ……魂から霊へ……霊から一如へ……。
能とは何か (新字新仮名) / 夢野久作(著)
フランクの音楽は、いかにその外見は壮麗であるにしても、かつてバッハがありし如く、深く信仰に根ざしたもので、換言すれば、厭離おんり欣求ごんぐの音楽であり、懺悔ざんげ贖罪とくざいの音楽であったのである。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
生をぬすまんがために表面追従するだけで、生の拡大と鞏固きょうことを欣求ごんぐするような英雄は一人も来やしない。
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
大乗の欣求ごんぐもあり得ないわけでございます、大乗はにして、小乗はなんなりと偏執へんしゅうしてはなりませぬ、難がなければ易はありませぬ、易にしては難がけませぬ
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
いかに生来の怪足力とはいえ、歩くことのために歩いているのではない、どうかして無事に人里に出たいものだ、正しい方向に向って帰着を得たいものだ——と衷心に深く欣求ごんぐして
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)