機会をり)” の例文
旧字:機會
父が俳句にことよせて、京都にのぼつたのも、その志を遂げる機会をりを、見つけたかつたために違ひない、と良寛さんは思つた。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
こんなに沢山言語を知つてゐては、現世このよでは滅多に使ふ機会をりもなからう、いつそ地獄へでもちたら定めし晴々するに相違なからうと思はれる程だつた。
そんな訳で、復た奈何どうかいふ機会をりがあるまで、特にその為に書かれた先輩の序文を二つまで附けて、日記はそのまゝ彼女の妹の手許に蔵つて置くことに成つた。”
一葉の日記 (新字旧仮名) / 久保田万太郎(著)
貴所等あなたがたわたしとは長く御近所に住つて居りますが、今まで仲よく一所に遊ぶ様な機会をりがありませんでした、今晩はくこそ来て下さいました、——今晩貴所方あなたがたをおよび申したのは
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
もう少し人気ひとけさへなかつたなら、或は機会をりを見て這ひ出してゐたかも知れないが、人前で袋の中から這ひ出したりしては、いい笑ひものになるから……と考へて彼は思ひとまつた。
機会をりもなくつて、それからひさしぶりのたびに、はじめてバスケツトにをさめたのである。
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
若い時は青雲の夢を見たもので、機会をりあらば宰相の位にも上らうといふ野心家であつたが、財産のなくなると共にいたづらに村の物笑ひになつた。今では村会議員に学務委員を兼ねてゐる。
足跡 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
さて三人は三人とも、実に医術もよくできて、また仁心じんしんも相当あつて、たしかにもはや名医の類であつたのだが、まだいゝ機会をりがなかつたために別に位もなかつたし、遠くへ名前も聞えなかつた。
北守将軍と三人兄弟の医者 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
また、語るべき機会をりもなく
ふるさと (新字旧仮名) / 漢那浪笛(著)
たまにしか逢ふ機会をりはなかつたものゝ、わたくしにすれば、十四五年にわたる古い附合である。そして、逢へばいろ/\と、いつもいゝ話を聞かせてくれた人である。
(新字旧仮名) / 久保田万太郎(著)
何でもこの硯一つで河合家の百硯に対抗するといふ代物しろもので、山陽のめちぎつた箱書はこがきさへはつてゐるので、硯好きの河合はいゝ機会をりがあつたら、何でも自分の方にき上げたいものだと
古松研 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
何でもこの硯一つで河合家の百硯に対抗するといふ代物しろもので、山陽のめちぎつた箱書はこがきさへはつてゐるので、硯好きの河合はいゝ機会をりがあつたら、何でも自分の方にき上げたいものだと