橋銭はしせん)” の例文
わたし其時分そのじぶんなんにもらないでたけれども、母様おつかさん二人ふたりぐらしは、この橋銭はしせんつてつたので、一人前ひとりまへ幾于宛いくらかづゝつてわたしました。
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
わたくしはふと大正二、三年のころ、初て木造の白髯橋ができて、橋銭はしせんを取っていた時分のことを思返した。
寺じまの記 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「側に橋番の爺がいましたよ、聞いてみると橋銭はしせんが無いのに、平気でずんずん、悠々と渡ってゆくってんで」
長屋天一坊 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
私が夏泳ぎに行く水練場の在る処はこの少し上流で、千住の鉄橋の近くであった。その頃白鬚橋を渡るのには橋銭はしせんをとられた。向島側の橋のたもとに関所のような小屋があって、そこで橋銭を徴集した。
桜林 (新字新仮名) / 小山清(著)
母様おつかさんはうそをおつしやらない、博士はかせ橋銭はしせんをおいてにげてくと、しばらくしてあめれた。はし蛇籠じやかごみんなあめにぬれて、くろくなつて、あかるい日中ひなかた。
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
いゝえ、さうしてあけてかないと、お客様きやくさまとほつても橋銭はしせんいてつてくれません。づるいからね、引籠ひつこもつてだれないと、そゝくさ通抜とほりぬけてしまひますもの。
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)