横網よこあみ)” の例文
が、橋を渡って右へ、横網よこあみ辺から二つ三つ路地を曲ると、乞食こじきの姿は、フッと掻き消す如く見えなくなってしまいました。
悪人の娘 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
「そこで相談だが、まあ聞いてくんねえ筋書はこうだ、——橋場の親分が客人を伴れて来る、場所は横網よこあみ葉名家はなや
お美津簪 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
しひ松浦まつうら」のあつた昔はしばらく問はず、「江戸の横網よこあみ鶯の鳴く」と北原白秋きたはらはくしう氏の歌つた本所ほんじよさへ今ではもう「歴史的大川端おほかははた」に変つてしまつたと言ふ外はない。
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
わたくしが宵の口に横網よこあみの河岸を通ると、片側の竹藪のなかへ作さんがはいって行こうとするところで、今そこで狐を一匹見つけたから追っかけて行こうとするんだと云いました
半七捕物帳:18 槍突き (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
斯様に林大學頭様の折紙が付いている宝物ほうもつで、私も一度拝見しましたが御維新後坂倉屋が零落おちぶれまして、本所横網よこあみ辺へ引込ひっこみました時隣家より出た火事に仏壇も折紙も一緒に焼いてしまったそうで
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
横網よこあみに一銭蒸汽近づくと廻るうねりも君おもはする
桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「いえ、もう決して無理は申しません。その代りに、一生のお願い、私を横網よこあみまで送っては下さいませんか」
僕等はそこから引き返して川蒸汽かはじようきの客になる為に横網よこあみの浮き桟橋さんばしへおりて行つた。昔はこの川蒸汽も一銭蒸汽と呼んだものである。今はもう賃銭も一銭ではない。
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
定斎ぢやうさいきしみせはしく橋わたる江戸の横網よこあみ鶯の啼く
桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
茶汲ちゃくみ女は三人、小体こていな暮しですが、銅壺どうこに往来の人間の顔が映ろうという綺麗事に客を呼んで横網よこあみに貸家が三軒と、洒落しゃれた住宅まで建てる勢いだったのです。
不意に横網よこあみへ御出でなすった時でも、わたくしが御使いから帰って見ると、こちらの御新造は御玄関先へ、ぼんやりとただ坐っていらっしゃる、——それを眼鏡越しににらみながら
奇怪な再会 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「へエ——珍らしく親方が店へ來て泊るつて言ふから、あつしと相吉さんは、横網よこあみの家の二階で夜中まで話し込んで、散々お秀さんに小言を言はれ乍ら寢ましたよ」
れん本所ほんじょ横網よこあみに囲われたのは、明治二十八年の初冬はつふゆだった。
奇怪な再会 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「ヘエ——珍しく親方が店へ来て泊るっていうから、あっしと相吉さんは、横網よこあみの家の二階で夜中まで話し込んで、さんざんお秀さんに小言を言われながら寝ましたよ」