板囲いたがこい)” の例文
旧字:板圍
あの東京浅草の住慣れた二階の外に板囲いたがこいの家だの白い障子の窓だのをながめ暮した岸本の眼には、古い寺院にしても見たいような産科病院の門前にひるがえる仏蘭西フランスの三色旗
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
板囲いたがこいをして、横に長い、屋根の低い、湿った暗い中で、働いて居るので、三人の石屋もひとしく南屋みなみやに雇われて居るのだけれども、渠等かれらは与吉のようなのではない、大工と一所いっしょ
三尺角 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
道庵と与八とは土間の程よいところに陣取って、与八は郁太郎をおろして膝にかかえ、物珍らしそうに、この大きな小屋がけの天井から板囲いたがこいいっぱいになった見物人の方をながめて
その頃の宮城前の馬場先一帯は大きな、草茫々ぼうぼうたる原っぱになっていて、昼間は兵隊が演習をしていた。夜は又半出来のビルデングや建築材料、板囲いたがこいなんぞの間を不良少年少女がうろうろする。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
戦争のはげしくならない時は、将軍がみごとな馬車をってそこいらを乗り廻しているのがはるかの先から見えたそうである。A君のゆびさして教えられたうちで、ただ一つ質素な板囲いたがこいの小さい家があった。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
まないた引摺ひきずっていては一足ひとあしごとにあとしざるようで歯痒はがゆくなる。それを一町ほど行って板囲いたがこいの小屋の中をのぞき込むと、温泉があった。大きい四角なおけふちまで地の中にんだと同じようなふねである。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)