東下あずまくだ)” の例文
いかさま東下あずまくだりとしかいいようのない、仕度も仕度、たいへんな大仕度に、つづみの与の公、まずたましいを消さなければならなかった。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
雪之丞は、東下あずまくだりをしたばかりの、今日、この二人の恩人たちに、会うことが、出来たということが、何となく、幸先さいさきがいいように思われる。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
いきおい神崎与五郎東下あずまくだりという一席になりますが、さてイヨ/\仇討の機運が熟して大石初め一味の者が江戸へ下ります。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
まこと大名ならば素通すどおまかりならぬものを、知らぬ顔をして挨拶も致さず通りぬけるは即ちもぐりの大名じゃッ。その方共は島津の太守の名をかた東下あずまくだりの河原者かわらものかッ
皆さんは、『太平記』の中の俊基朝臣としもとあそんの「東下あずまくだり」の条をお読みになったことがありましょう。
深夜の電話 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
伊勢の国から東下あずまくだりをする時代から、この種の笠をかぶりつけてもいるし、尾上おべ後山うしろやまの復活の記念としての跛足びっこは、今以てなおってはいないのだから、それは一目見れば誰でも
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「山口(隣村)から見物に来たおじさんがおもしろいことを言ったで——まるで錦絵にしきえから抜け出した人のようだったなんて——なんでも、東下あずまくだりの業平朝臣なりひらあそんだと思えば、間違いないなんて。」
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「都の堂上人が、東下あずまくだりして、歌の旅でもしているのか……?」
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)