“曙(あ)” の例文
「いまだも寤めまさぬか。早く白すべし。夜は既に曙(あ)けぬ。獵庭(かりには)にいでますべし」とのりたまひて馬を進めて出で行きぬ。
家ごとの炊煙(すいえん)は、曙(あ)けたばかりの町の上へ、戦(いくさ)のように立ちのぼっていた。大津の宿駅は、湖北から石山までぼかしている朝がすみと、その熾(さかん)な煙の下に見えてきた。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかしながら、単なる時の経過では決して曙(あ)けさせることのできない、あの朝の性格はこのようなものなのだ。われわれの眼を盲(めしい)さす光りは、われわれにとっては闇にすぎない。
数言(すげん)興(きよう)尽(つ)きて、遠寺(ゑんじ)の鐘(かね)一五六五更を告ぐる。夜既(すで)に曙(あ)けぬ。別(わか)れを給ふべし。こよひの長談(ながものがたり)まことに君が眠(ねむり)をさまたぐと、起(た)ちてゆくやうなりしが、かき消して見えずなりにけり。
月落ち、夜(よ)は紫に曙(あ)けて、九月十七日となりぬ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
トロイア軍の戰勝の日は正しくも曙(あ)けしなり。
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
夜、曙(あ)けんとするや、一斉の銃声あるべし。まさに、嚢中(のうちゅう)の敵を一掴(いっかく)の機(き)、そのときにあり。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)