普請中ふしんちゅう)” の例文
その普請中ふしんちゅう不念入ふねんいりというかどで、最初の奉行、棟梁とうりょう小普請こぶしん方など、幾人もの者が、遠島に罪せられたほどやかましい建立こんりゅうであった。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのまた一つは『普請中ふしんちゅう』である。鴎外としては最も感慨の深いものであろう。『舞姫』時代の夢がここによみ返って来る。その夢から見ると現在は何と変った姿であろう。
普請中ふしんちゅう貸家かしやも見える。道の上には長屋の子供が五、六人ずつ群をなして遊んでいる。空車からぐるまを曳いた馬がいかにも疲れたらしく、たてがみを垂れ、馬方うまかたの背に額を押しつけながら歩いて行く。
元八まん (新字新仮名) / 永井荷風(著)
これは家康がこの府中の城に住むことにきめて沙汰さたをしたのが今年の正月二十五日で、城はまだ普請中ふしんちゅうであるので、朝鮮の使の饗応きょうおうを本多がやしきですることに言いつけておいたからである。
佐橋甚五郎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
で、ちょうどその普請中ふしんちゅうでありました。その翌日すぐにサラット居士こじと共にグンパールという所の寺に住んで居るモンゴリヤの老僧を尋ねました。この老僧はその時分七十八歳でなかなかの学者です。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
「うむ、お城のご普請中ふしんちゅうをつけこんで、雑多ざったなやつがまぎれこむようすじゃ。びしびしとめつけて白状はくじょうさせい」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
普請中ふしんちゅうの大手の道を、秀吉と三使の姿が駒をならべて降りて行った。城下の辻へ来ると、利家がたずねた。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)