新大橋しんおおはし)” の例文
深川千歳町ちとせちょうの水戸さまの石置場いしおきばから始まって新大橋しんおおはしのたもとまで、三丁の川岸っぷちにそって大小十四棟の御船蔵おふなぐらが建ちならんでいる。
顎十郎捕物帳:13 遠島船 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
明治四十一、二年のころ隅田川すみだがわに架せられた橋梁きょうりょうの中でむかしのままに木づくりの姿をとどめたものは新大橋しんおおはし千住せんじゅの大橋ばかりであった。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
当時は大火などのあとでよく道筋や地割の変更がある、そのときも両国橋から新大橋しんおおはしまで、河岸に沿って新しく道が出来た。
柳橋物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
ケイズ釣りというのはそういうのと違いまして、その時分、江戸の前の魚はずっと大川おおかわへ奥深く入りましたものでありまして、永代橋えいたいばし新大橋しんおおはしより上流かみの方でも釣ったものです。
幻談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
これを例するに浅野あさのセメント会社の工場と新大橋しんおおはしむこうに残る古い火見櫓ひのみやぐらの如き、あるいは浅草蔵前あさくさくらまえの電燈会社と駒形堂こまがたどうの如き、国技館こくぎかん回向院えこういんの如き
ゆるやかに西南のかたへと曲っているところから、橋の中ほどに佇立たたずむと、南のかたには永代橋えいたいばし、北の方には新大橋しんおおはしよこたわっている川筋の眺望が、一目に見渡される。
深川の散歩 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
両国橋りょうごくばし新大橋しんおおはしとの間を一廻ひとまわりしたのち、長吉はいよいよ浅草あさくさの方へ帰ろうと決心するにつけ、「もしや」という一念にひかされて再び葭町の路地口に立寄って見た。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
蜀山人しょくさんじん吟咏ぎんえいのめりやすにそぞろ天明てんめいの昔をしのばせる仮宅かりたく繁昌はんじょうも、今はあしのみ茂る中洲なかすを過ぎ、気味悪く人を呼ぶ船饅頭ふなまんじゅうの声をねぐら定めぬ水禽みずとり鳴音なくねかと怪しみつつ新大橋しんおおはしをもあとにすると
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)