慣例しきたり)” の例文
後にずらしておくのがむかしからの慣例しきたりぢや。俺は田舎爺ぢやが、かう見えてもお前に比べるとずつと先輩なんぢやからの
中宮寺の春 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
「それが慣例しきたりですからね。」と言訳するように言い足した。それから間もなく、その上一言も言わずに、死んでしまった。
これは毎年の慣例しきたりで七月十五日の早朝あさまだきにご神体の幕屋まくやがひらかれるのである。そうして黄金の甲冑かっちゅうで体をよろった宗介様を一同謹んで拝するのであった。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
すぐよこにお母さんらしい人が坐っていて、前の方には、この城下町の昔から慣例しきたりのようになっている物見遊山に用いられる重詰の御馳走がひらかれてあった。
性に眼覚める頃 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
ところでとっつぁん、春にはなんとかして当てようと思うんだがね。いっそ、慣例しきたりを打ち破って、四谷を
人魚謎お岩殺し (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
「なるほど、古市では座敷へ上らずに、庭へむしろを敷いて聞かせてくれたな。しかしそれはあの土地の慣例しきたりであろう、ここへ来てまでその慣例を守ろうとはおろかな遠慮」
それも畫道の上ばかりならまだしもでございますが、あの男の負け惜しみになりますと、世間の習慣ならはしとか慣例しきたりとか申すやうなものまで、すべて莫迦に致さずには置かないのでございます。
地獄変 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
ただもう「慣例しきたり」に従わぬよう、バアで無頼漢の振りをしたり、片端からキスしたり、つまり、また、あの情死以前の、いや、あの頃よりさらにすさんで野卑な酒飲みになり、金に窮して
人間失格 (新字新仮名) / 太宰治(著)
清兵衛は小さな声で、「これは島の慣例しきたりなのでございます」とこたえた。
ボニン島物語 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
それから遠くから聞き付けて見舞に来て呉れた縁者などを引留めて、村に慣例しきたりの手伝酒を振舞つて居るところであるが、その十五畳の大広間には順序次第もなく、荒くれた男がずらりと並んで
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
震災後の吉原はまったく昔日せきじつおもかげを失って、慣例しきたりの廃止されることも多く、昔をしのぶよすがとてはなかった。公園もきれいに地均じならしをされて、吉原病院の医師や看護婦のテニス場と化してしまった。
桜林 (新字新仮名) / 小山清(著)
「それはお前に言われるまでもない。質素はおれも賛成だねえ。でも、本陣には本陣の慣例しきたりというものもある。呼ぶだけのお客はお前、どうしたって呼ばなけりゃならない。まあ、おれに任せて置け。」
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
昨日きのふかはらぬ慣例しきたりに從へばよい。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
それも画道の上ばかりならまだしもでございますが、あの男の負け惜しみになりますと、世間の習慣ならはしとか慣例しきたりとか申すやうなものまで、すべて莫迦ばかに致さずには置かないのでございます。
地獄変 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
昨日きのうかわらぬ慣例しきたりに従えばよい。
人間失格 (新字新仮名) / 太宰治(著)