御遺骸ごいがい)” の例文
一度は水戸みとの姫君さまのお輿入こしいれの時。一度は尾州の先の殿様が江戸でおくなりになって、その御遺骸ごいがいがこの街道を通った時。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
しかるところ松向寺殿御遺骸ごいがいは八代なる泰勝院にて荼毗だびせられしに、御遺言ごゆいごんにより、去年正月十一日泰勝院専誉御遺骨ごゆいこつを京都へ護送いたし候。
興津弥五右衛門の遺書 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
門の内にるとひとしく、一人が巻持てる紙旗をと開けば、(塚町光子様御遺骸ごいがい)と墨黒に書きたるを、真先まっさきに押立てて、はばかる色なく、玄関に横附にして異口同音、「頼む、頼む。」
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
『中村様のごときは、誰でも信じ切っていたお人でしたのに。——内匠頭様のおん亡骸なきがらを泉岳寺へ御葬送申しあげた当夜、御遺骸ごいがいの前でもとどりを切って復讐を誓ったうちの一人でしたが』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)