当直とうちょく)” の例文
当直とうちょくは、記者に囲まれたなり、ふかぶかと椅子の中に背を落とした。そして帽子を脱いで机の上に置くと、ボリボリと禿げ頭をいた。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
この下士は罰をすましたのち、いつか行方ゆくえ不明になってしまった。が、投身することは勿論当直とうちょくのある限りは絶対に出来ないのに違いなかった。
三つの窓 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
ケートはあやうくのがれて、運転手室にかけこんだ、そこにはスペイン人のイバンスが、当直とうちょくの勤務をしていた、かれは三十前後の温良な人物である。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
僕は夜半直の四点時鐘ごろ(当直とうちょく時間は四時間ずつにして、ベルは三十分毎に一つずつ増加して打つのである。よってこれは四点なればあたかも中時間である)船橋ブリッジにいた。
よくもしらべずわたしたもので、引取人の乙吉が生れつきの粗忽者であることを知らなかったせいであると、当直とうちょくは断定した。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
きょうも測定当直とうちょく古山ふるやま氏ほか二人と、巡視じゅんしがすんで休憩中きゅうけいちゅう大池おおいけさんと江川えがわさんの五人が、退屈たいくつしきった顔で、時間のたつのを待っていた。
超人間X号 (新字新仮名) / 海野十三(著)
それは、ちょうど午後七時五十分であったが、この無電室の当直とうちょく中の並河技士なみかわぎしは、おどろくべき内容をもった無電が、アンテナに引っかかったのを知って、船橋に通ずる警鈴けいれいを押した。
爆薬の花籠 (新字新仮名) / 海野十三(著)