広間ホール)” の例文
旧字:廣間
そう考えて来るうちに、私の頭の中にまたもかの丸の内倶楽部の広間ホールを渦巻く、燃え上るようなパソ・ドブルのマーチが漂い始めた。
少女地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
石畳を敷いたのはたった一筋で、それを辿って行くと、今度は少しずつ上りになって、やがて十メートル四方ほどの広間ホールになりました。
水中の宮殿 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
駅の広間ホールに渦巻いてゐる群衆の眼も、一度は必ず夫人の上に注がれて、彼等が切符を買つたり手荷物を預けたりする忙がしい手を緩めさせた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
隣りの広間ホールにも客はもうまばらだった。豊ちゃんが、睡そうな顔をして、近所の商店の番頭さんのお相手をしていた。
麻雀殺人事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
もとは広間ホールででもあったのだろう、七十畳ほどの広い部屋の床の上に三つばかりカンテラを置き、それを囲んで九人の人間がしゃがんだり、胡坐をかいたりしている。
魔都 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
広漠とした広間ホールの中で、私はひとり麦酒ビールを飲んでた。だれも外に客がなく、物の動く影さへもない。煖炉ストーブは明るく燃え、ドアの厚い硝子ガラスを通して、晩秋の光がわびしくしてた。
田舎の時計他十二篇 (新字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
(遠くの方で騒々しい叫び声が聞こえる)おききなさい、いま広間ホールじゃ大騒ぎですよ。芦田探偵はほんものの仮面強盗だと思って、きっとご主人と組み打ちでもしていることでしょう。
探偵戯曲 仮面の男 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
「ハイ、なんでも広間ホールの入口に置いたような心持ちもいたします」
頸飾り (新字新仮名) / ギ・ド・モーパッサン(著)
いや、駆け出そうとしたのですが、十メートル四方ほどの広間ホールを出て、外へ出る隧道トンネルへかかろうとして立ちすくんでしまったのです。
水中の宮殿 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
駅の広間ホールに渦巻いている群衆の眼も、一度は必ず夫人の上に注がれて、彼等が切符を買ったり手荷物を預けたりする忙がしい手を緩めさせた。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
当日になると中甲板の五六百人ぐらい這入はい広間ホールに舞台が出来て、そこへ一等の船客から吾々特別三等の連中まで一パイになって見物するんで
人間腸詰 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
特別室というのは広間ホールの隣りにある長細い別室で、ここには割合にゆっくり麻雀卓子テーブルが四台並べてあり、椅子にしてもこまにしてもかなり上等のものを選んであり、卓子布子テーブルクロース
麻雀殺人事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
空には煤煙ばいえんかすかに浮び、子供の群集する遠い声が、夢のやうに聞えて来る。広いがらんとした広間ホールの隅で、小鳥が時時さえずつて居た。ヱビス橋の側に近く、晩秋の日の午後三時。
田舎の時計他十二篇 (新字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
こうしてまたも十秒ばかりの沈黙が続くうちにまたも、広間ホールの方向で浮き上るようなツウ・ステップのレコードがワアア——ンンと鳴り出した。
少女地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
燿子の指さす方を見ると、恐しい勢で隧道トンネルの入口から入って来る水の大量が、広間ホールの前で一度淀んで、右手の大きい岐道えだみちへ静かに静かに流れて行っているのです。
水中の宮殿 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
少女は先刻の客間サロンの方へ導かないで、玄関の広間ホールから、直ぐ二階へ導く階段を上つて行つた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
これは大きい広間ホールの天井を硝子ガラス張りとして、その上に太陽のスペクトルと同じスペクトルの電灯を点じて、あたかも、その広間の上は青天井で、雲雀ひばりでも舞っていそうな感じが出るのである。
人造物語 (新字新仮名) / 海野十三(著)
少女は先刻の客間サロンの方へ導かないで、玄関の広間ホールから、ぐ二階へ導く階段を上って行った。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)