しあわ)” の例文
舟にそれを乗せて湖水こすい水葬すいそうしたことなどを思いうかべて、まだ子をたずねる母、たずねらるる子は、しあわせであるように考えられた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
君の甥御さんのことだが、もしこのきわめてむずかしい問題にぶつかれる元気がわしにあるなら、もちろんわしもたいへんしあわせだと思っている。
審判 (新字新仮名) / フランツ・カフカ(著)
こんなたからはいるとは、なんという自分じぶんしあわせものではないか。むらひとたちにせたら、さぞ、うらやむことだろう。
羽衣物語 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そこには評判のいいおとなしい詩人が、招待されたすべての客から賞讃しょうさんされてすわっていました。この人はしあわせでした。
「私に御遺言をなすったこともありますから、ただ今からは私をむつまじい者と思召おぼしめしてくださいましたらしあわせです」
源氏物語:14 澪標 (新字新仮名) / 紫式部(著)
母は働く一方の女で学問はなかったが、深い信仰心しんこうしんを持っていた。このふたりのもとに、幼いころはともかくもしあわせな日々を送ることができたのである。
絵のない絵本:02 解説 (新字新仮名) / 矢崎源九郎(著)
「ほんとにお前さんはしあわせだよ。辛抱さえすれば、十万円という財産家の家を、切り廻して行けるんだもの。」
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
そうもうしましたのも、あなたの真心まごころがよくわかり、うれしくおもったからです。そうおもえばこそ、なおさら、あなたをしあわせにしなければなりません。
羽衣物語 (新字新仮名) / 小川未明(著)
母は働く一方の女で学問はなかったが、深い信仰心しんこうしんを持っていた。このふたりのもとに、幼いころはともかくもしあわせな日々を送ることができたのである。
内大臣の子息のとうの中将とべんの少将だけはもう真相を聞いていた。知らずに恋をしたことを思って、恥じもしたし、また精神的恋愛にとどまったことはしあわせであったとも思った。
源氏物語:29 行幸 (新字新仮名) / 紫式部(著)
思いがけねえ人たちと力をあわすことになったから、弦之丞様はあてにしねえで、この銀五郎の一心で、きッと阿波の内幕を探ってみせる! お千絵様の身もおしあわせにしてみせる……
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ここの家へ来た嫁さんは何しろしあわせですよ。男ッぷりはよし、伎倆はたらきはあるしね。」
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
まったく、この地上ちじょうのくらしをらぬわたしに、なんで、あなたをしあわせにすることができましょう。
羽衣物語 (新字新仮名) / 小川未明(著)
私はこの世に長く生きていようとも、それを楽しいことに思おうともしない人ですから、ただ毎日願っていることは、あなただけがしあわせになってほしいということだったのですよ。
源氏物語:49 総角 (新字新仮名) / 紫式部(著)
見つけてしあわせにしてやりたいとて歩きます。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)