尽頭はずれ)” の例文
旧字:盡頭
町の尽頭はずれまで来た時に、お杉は初めて立止たちどまった。尾行して来た人々もう散ってしまった。お杉は柳屋のかどに寄って、皴枯しわがれた声で
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
女中は二階へあがって行くと、足を浮かして尽頭はずれの部屋の前まで行って、立ち停ると、袂で顔を抑えてくすくす笑っていた。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
トタンにくだんの幽霊は行燈あんどんの火を吹消ふっけして、暗中を走る跫音あしおと、遠く、遠く、遠くなりつつ、長き廊下の尽頭はずれに至りて、そのままハタとむべきなり。
化銀杏 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
仲冬の寒い奥州の長途も尽きてようやく目ざす叛乱地に近づいた。政宗は吾が領の殆んど尽頭はずれの黒川の前野に陣取った。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
書斎かと思って書斎へ行こうとすると、椽側の尽頭はずれの雪江さんの部屋で、雪江さんの声で
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
うちにいて心配するよりも、迎いながら町尽頭はずれまで出て見ようと決心して、市郎は洋杖すてっきを振りながら門を出ると、あたかも七兵衛の駈けて戻るのに逢った。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
どうせひまだからいつまでも待とうと云うのを——そういってね、一旦いったん運転手に分れた——こっちの町尽頭はずれの、茶店……酒場バアか。……ざっとまあ、饂飩屋うどんやだ。
灯明之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
K—は、ほかの三軒が容易にふさがらないので、帰省して出て来ると、自分で尽頭はずれの一軒を占めることにした。その日もお銀に冬物を行李から出させて、日に干させなどしていた。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
なお村の尽頭はずれまで連れ立って来たお浪に別れて我が村へと飛ぶがごとくに走り帰った。
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
部屋は此通り余り好くはなかったが、取得とりえは南向で、冬暖かで夏涼しかった。其に一番尽頭はずれの部屋で階子段はしごだんにも遠かったから、の客が通り掛りに横目で部屋の中をにらんで行く憂いはなかった。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)