尻馬しりうま)” の例文
よその人気の尻馬しりうまに乗って人真似をして、柳の下のどじょうねらうような真似は、お角さんには金輪際こんりんざいできないのですよ。
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
(中略)世間がつとに認めてゐることを、尻馬しりうまに乗つて、屋上をくじやうおくして見たつて、なん手柄てがらにもならない
解嘲 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
粂吉一座の尻馬しりうまに乗って旅興行に出てからというものは、その点だけでもめぐまれています。で、伊兵衛と一緒に苦労するのが少し、嫌気になってきたのかも知れない。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
喘息病みの鯨がえた当時からそら来たなとまで覚悟をしていたくらいだから周囲のものがワーと云うや否や尻馬しりうまについてすぐやろうと実は舌の根まで出しかけたのである。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
私の文章は、以上の人々の尻馬しりうまに乗ったまでで、何ら独創的な見解があったわけではない。
純粋小説論 (新字新仮名) / 横光利一(著)
あれさえいなけりゃ、なあに他の連中は尻馬しりうまに、乗ってると言うだけのもんですからね。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
お前まで尻馬しりうまに乗って、今あれが『ぬしゅんだ』と言ったね、スカートをはいたげすなプロシアのにわとりの足め! ああ、みな! ああ、皆なんというやつらだろう! 第一あの
元子が顔をさしよせていうと、ひろみが尻馬しりうまにのって
日めくり (新字新仮名) / 壺井栄(著)
大言壮語だとその尻馬しりうまに乗った者らは繰り返す。
近頃流行はやるベルグソンでもオイケンでもみんなむこうの人がとやかくいうので日本人もその尻馬しりうまに乗ってさわぐのです。ましてその頃は西洋人のいう事だと云えば何でもかでも盲従もうじゅうして威張いばったものです。
私の個人主義 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)