こま)” の例文
なるほど、男はこまいばって、全身が剃刀かみそりのごと、殺気がみなぎっちょる。肺病とかいうこッちゃが、命短しで、世をすねたかな?
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
御互になるほどと合点が参るためには、今少し詳細に「情を理想とする」とは、こんなものだとこまかく割って御話しをしなければなるまいと思います。
文芸の哲学的基礎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
さと わしや、今度あんたから貰ふた金で、お父つつあんに、こまあか店ば出さするつもりですたい。近所に酒飲みの多かけん、酒屋が一番よかて思ひます。
牛山ホテル(五場) (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
其中には銀細工やニッケル細工のこまかい精巧なものが倒れたり破れたりして狼籍し、切子の美しい香水瓶が憐れに破われて煙臭い塵臭い中に床しいホワイトローズの香気をただよわしていた。
「いや、これは剰銭おつりが足りない。私もあいにくこまかいのが……」
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
おまけに、暗殺命令を発する本部がある。命令一下、品川信健を殺した西中宗之助は、監獄から出て来ると、恩賞に、こまい炭坑を貰うて、顔役になった。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
千博ちひろが、すこし熱があって、変なせきをしよるばい。勝則のこまいときのごと、馬牌風ばひふ(ジフテリア)にでもなると大事おおごとじゃけ、夜が明けたら、じき、医者にて貰うがええな」
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)