寿ことほ)” の例文
旧字:
どう今日きょう船出ふなで寿ことほったのもほんのつか、やや一ばかりもおかはなれたとおぼしきころから、天候てんこうにわかに不穏ふおん模様もようかわってしまいました。
新玉の年たちかえる初春の朝、大内山の翠松に瑞雲棚引き、聖寿万歳を寿ことほいで鶴も舞い出でよう和やかな日和。
魔都 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「軍功を賞し、祝酒を給わるであろう。全軍の将兵も、弓を袋に収め、このよき新春を、寿ことほぎ合うがよい」
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
聖天子万機ばんきの朝政をみそなわすによしとて、都とさだめたもうて三十年、国威は日に日に伸びる悦賀よろこびをもうし、万民鼓腹して、聖代を寿ことほ喜悦たのしみを、おおやけにも、しろしめせとばかり
一世お鯉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
その屋根を天にたとえることは、新家屋を寿ことほぐのが主な動機だから自然にそうなるので、また、万葉巻十九(四二七四)の新甞会にいなめえの歌の「あめにはも五百いほつ綱はふ万代よろづよに国知らさむと五百つ綱ふ」
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
もとは、勅使の接待役、上野介などへ世辞はいらんことじゃ。所で、この衝立ついたては、何と心得て出された。晴の御大礼、長途ちょうとの勅使を寿ことほぎまつる大玄関に、墨絵のものを置くとは何という量見じゃの。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
古来農桑を御奨励になり、正月の初子はつねの日に天皇御ずから玉箒を以て蚕卵紙をはらい、鋤鍬すきくわを以て耕す御態をなしたもうた。そして豊年を寿ことほぎ邪気を払いたもうたのちに、諸王卿等に玉箒を賜わった。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)