寵妃ちょうひ)” の例文
御所の女性にょしょう——しかも上皇の寵妃ちょうひであるつぼねが、人目をしのんで、この山庵さんあんへ来たということだけでも、重大な問題だ、事件である。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
堀河の典侍は帝の寵妃ちょうひであるから、この人の奏聞そうもんには帝も御耳を傾けられた。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
それは古の暴君紂王ちゅうおう寵妃ちょうひ末喜ばっきを描いた絵であった。
刺青 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
眼をふさぐと、帝の寵妃ちょうひ廉子やすこが浮かぶ。また、大酔した帝と佐々木道誉とのふしぎなごとがあたまの中を通って行く。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
折から、幸いにも、帝の寵妃ちょうひの父にあたる董承とうじょうという老将が、一隊の兵を率いて、帝の御車を慕って来たので、帝は、虎口を脱して、先へ逃げ落ちて行かれた。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
帝の寵妃ちょうひ、三位ノ廉子やすこなのである。すぐ内からは、侍者じしゃの千種忠顕ただあきが、侍者ノ間からいらえて出て来た。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
で、ついにまた入内じゅだいをやむなくしたが、前にもまして廉子がこわく、また廉子の目もなんとなくほかの寵妃ちょうひを見るのとちがい、自分へのみはすさまじく思われて仕方がない。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして、そこの多くの女性のうちでも最も羨望せんぼうされる寵妃ちょうひとなって、上皇の愛を賜うほどな身になった今日になってみれば、昔の憧憬あこがれは、まことに幼稚な少女の夢にすぎなかった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また、亡き寵妃ちょうひ為子の父、大納言御子左為世みこひだりためよなども切に、おいさめしたものだ。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おれはそこでふと思いついたのだが、上皇の寵妃ちょうひが、二人までも、御所を
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これというのも、前帝の寵妃ちょうひだった王美人の生んだ協皇子を愛するのあまり、何后、何進らの一族から睨まれた結果と——ぜひなき運命のくるまのうちに涙にくれながら都離れた地方へ送られて行った。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)