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一寸ちょっと前言した如く、巻九(一六六四)に、雄略天皇御製歌として、「ゆふされば小倉の山に臥す鹿の今夜こよひは鳴かずねにけらしも」という歌がっていて
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
此の御方を母とし、御前様おんまへさまを夫と致候て暮し候事も相かなひ候はば、私は土間にね、むしろまとさふらふても、其楽そのたのしみぞやと、常に及ばぬ事をこひしく思居りまゐらせ候。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
犬傍にありて衣の裾をくわえて引く、ややめてまたぬれば犬しきりに枕頭に吠ゆ。
それは昼間であったか夜であったか忘れたが多分夜であったのであろう。一等客は漱石氏と私との二人きりであった。漱石氏は棚になっている上の寐台ねだいね、私は下の方の寐台にた。
漱石氏と私 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
矢っ張そうだったのかと、胸もつぶれるような思いで、それからの数夜と云うもの、私はられず、しかしどうしようもなく一人きりで歎き明かしていた。そんな或夜の明け方だった。
かげろうの日記 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
緩流清澈せいてつ宛然えんぜん一匹ノ白練しろねりナリ。ケダシソノ大蛇トイヒ絹トイフハ水勢ニ由テ名ヲ得タルナリ。氏家駅ニ飯ス。三里余ニシテ喜連川ノ駅ニ宿ス。夜ニ入ツテ従者皆眠ニ就ク。余独リネズ。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
夜すがらねず、看守りて脂肪に富める牧牛を 550
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
妾も金起もツイ其気になり此夜は大胆にも築地陳施寧の家に行き広々と二階にね次の夜も又泊り翌々日の朝に成り寧児には堅く口留して帰りたり此後も施寧の留守と為ること分るたびに必ず母より前日に妾の許へ知らせ来る故
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
死をもとめて得ず、居れば立つをおもひ、立てばすをおもひ、臥せば行くをおもひ、ぬれば覚め、覚むれば思ひて、夜もあらず、日もあらず、人もあらず、世もあらで
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
阿騎あき宿やど旅人たびびとうちなびきらめやもいにしへおもふに 〔巻一・四六〕 柿本人麿
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
「春夜不寐。」〔春夜ネズ〕と題した長句の中には「独臥空床展転頻。帳影如烟闃無人。紅袖娯夜非我分。青灯長伴苦吟身。」〔独臥空床展転スルコト頻リナリ/帳影烟ノ如クしずカニシテ人無シ/紅袖娯夜ハ我ガ分ニ非ズ/青灯長ク伴フ苦吟ノ身ニ〕と言い
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
また、やはり此巻(一四八四)に、「霍公鳥ほととぎすいたくな鳴きそひとりゐて宿らえぬに聞けば苦しも」という大伴坂上郎女おおとものさかのうえのいらつめの歌があるが、「吾が恋まさる」の簡浄かんじょうな結句には及ばない。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)