室借まがり)” の例文
室借まがりだといふのに何の不思議があらう、博士はうちに居る時は、山のやうな書物の蔭で、あの小さな身体からだ一つを遠慮して持扱もちあつかつてゐる。
彼が嘗て牛込の奧に室借まがりをしてゐた頃、其の細君と隣室にゐた學生との間に變な樣子が有つて、其の爲に引越して了つた事——それが其の話の内容だつた。
我等の一団と彼 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
現在六畳と二畳とで十五円の家賃は、六畳一室借まがりにすれば少なくも三円の室代へやだいを切りつめることができると彼はしじゅう、万一の場合の覚悟をきめていた。
犠牲者 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
こんな屋根裏に室借まがりする
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
手つ取早く言つたら、博士の今のうち書物ほんを入れる為めに借りたうちで、博士自身や家族達はやつ室借まがりをしてゐるに過ぎない有様だ。
直ぐ邸宅やしきの立派なのを欲しがるのと打つて変つて、今も往時むかし宿屋ホテル室借まがりで、その全財産を鞄一つにをさめてけろりとしてゐる。