娼婦しょうふ)” の例文
もとより長き放埒ほうらつに、貧しく乏しくなりはしても、玉より輝く美容のために身を粉にしても、入揚いれあぐる娼婦しょうふの数もすくなくないのでした。
艶容万年若衆 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
桂子にはとにかく、まじめになりたいという気持が感じられるが、その四、五人の女たちは、全く典型的な娼婦しょうふのように私には思われた。
野狐 (新字新仮名) / 田中英光(著)
それら寡婦かふのうち衣食に窮するままに、辺境守備兵の妻となり、あるいは彼らを華客とくいとする娼婦しょうふとなり果てた者が少なくない。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
徳川氏の覇業はぎょう江戸に成るや、ここに発芽せし文華をしてことに芸術の方面において、一大特色を帯ばしめたる者は娼婦しょうふと俳優なり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
無学な漁夫と税吏みつぎとり娼婦しょうふとに囲繞いにょうされた、人眼ひとめに遠いその三十三年の生涯にあって、彼は比類なく深く善い愛の所有者であり使役者であった。
惜みなく愛は奪う (新字新仮名) / 有島武郎(著)
そう云って、嫣然えんぜんと笑いながら、青年の顔をのぞき込む瑠璃子夫人の顔には、女王のような威厳と娼婦しょうふのようなこびとが、二つながら交っていた。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
だから源之助が田之助を学ぶのは、極めて当然なことで、その前の岩井半四郎と田之助の娼婦しょうふ式な役柄の方面が、彼に力強く保たれたのである。
役者の一生 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
「そうかしらん? 僕にはどうも娼婦しょうふ型の女は別れ易くって、母婦型の女は別れにくいような気がするんだが、そう思うのは身勝手かしらん?」
蓼喰う虫 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
今でも西蔵チベットその他の未開国には一婦多夫と女の家長権とが古代のおもかげのこしている。文明国においても娼婦しょうふ妓女ぎじょのたぐいは一種の公認せられた一婦多夫である。
私の貞操観 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
しかもあんなふうに使用するとは!……それは炎を発してる流星だ! ユダヤの娼婦しょうふたるイゾルデ姫だ。
羅は十四になって、良くない人に誘われて遊廓ゆうかくへ遊びにいくようになった。ちょうどその時金陵から来ている娼婦しょうふがあって、それが郡の中に家を借りて住んでいた。
翩翩 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
それがマタ・アリを大々的に利用したのだ。娼婦しょうふ型の美女が、微笑するスパイとして国境から国境を動きまわる。戦時である。歴史的なそう話にまでなってしまった。
戦雲を駆る女怪 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
雪子夫人は、お饒舌しゃべりをしたあとで、娼婦しょうふのように、いやらしいウインクを見せたのだった。
振動魔 (新字新仮名) / 海野十三(著)
薔薇ばら色と色との色合いをした魂で、火よりもいっそう熱く、あけぼのよりもいっそう新鮮であった。アスパジアは女の両極を同時に有する女性であった。娼婦しょうふにして女神であった。
夏子は娼婦しょうふの様なことを云って、蘭堂がうなずくのを見ると、そそくさと湯殿へ立去った。
恐怖王 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
下級の花街はなまち馴染なじみの女があり、その女にかよいつめているが、単にいろ恋ではなく、女を使ってその町の娼婦しょうふたちに金を貸し、これまた法外な高利を取りあげている、ということであった。
醜聞 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
私は再び隠遁いんとんに帰りたくなりました。どれだけの周囲が自分に許さるるかは、その人の器の大小によるのでありますまいか、キリストはサマリヤの娼婦しょうふにもただちに近づいて説教しました。
青春の息の痕 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
素人の娼婦しょうふ! 一軒を持っている娼婦! それは全く独特のものであった。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
「エイ、娼婦しょうふみたいな真似まねをするな」
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
瑠璃子の処女のごとつつましく娼婦しょうふの如く大胆な媚態びたいに、心を奪われてしまった勝平は、自分の答がう云うことを約束しているかも考えずに答えた。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
余はかかる暗黒時代の恐怖と悲哀と疲労とを暗示せらるる点において、あたかも娼婦しょうふすすり泣きする忍びを聞く如き、この裏悲うらがなしくたよりなき色調を忘るる事あたはざるなり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
つまりナオミは私に取って、最早や貴い宝でもなく、有難い偶像でもなくなった代り、一娼婦しょうふとなった訳です。そこには恋人としての清さも、夫婦としての情愛もない。
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
縦令たといその人が政治にかかわっていようが、生産に従事していようが、税吏みつぎとりであろうが、娼婦しょうふであろうが、その粗雑な生活材料のゆるす限りに於て最上の生活を目指しているのである。
惜みなく愛は奪う (新字新仮名) / 有島武郎(著)
パリーの女はみな娼婦しょうふでよからぬ母親で、できるだけ子供を産まないし、子供を産んでもその世話をせず、家に打ち捨てておいて、自分は芝居や遊び場所に出入りしてるのであった。
ローマが娼婦しょうふを玉座にのぼしたように、パリーは浮気女工うわきじょこうを玉座にのぼしている。
私も嫉妬しっとを起して、他の男たちと夜の町にとびだし、よからぬ場所に泊り、娼婦しょうふと共に寝たこともあるが、そんな場合、私は桂子の肉体を思って、どうしても、その他の女に触れる気になれない。
野狐 (新字新仮名) / 田中英光(著)
英領植民地のシンガポーアの、マレーストリートとバンダストリートとの二街に、赤色煉瓦れんがの三階建ての長屋が両側二町余にわたって続いていた。その長屋は全部日本人の娼婦しょうふのいる家であった。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
そう言っている母の言葉や、アクセントは、平生いつもの母とは思えないほど、下卑げびていて娼婦しょうふか何かのようになまめかしかった。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
葉子は自分の不可犯性(女が男に対して持ついちばん強大な蠱惑こわく物)のすべてまで惜しみなく投げ出して、自分を倉地の目に娼婦しょうふ以下のものに見せるとも悔いようとはしなくなった。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
まず娼婦しょうふが土方女に接木つぎきしてできたというくらいのところだった。
清浄によって娼婦しょうふたる貴婦人——忠実なるあまり友人を
そして、それが娼婦しょうふ淫売婦いんばいふとに限られてあった。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)