娘分むすめぶん)” の例文
その得意先とくいさきの一けん橋場はしば妾宅せふたくにゐる御新造ごしんぞがおいと姿すがたを見て是非ぜひ娘分むすめぶんにして行末ゆくすゑ立派りつぱな芸者にしたてたいと云出いひだした事からである。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
……これだと料理屋、待合まちあいなどの娘で、円髷まるまげった三十そこらのでも、差支さしつかえぬ。むかしは江戸にも相応ふさわしいのがあった、娘分むすめぶんと云うのである。
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
静岡の人福島竹次郎の長女で、県下駿河国するがのくに安倍郡あべごおり豊田村とよだむら曲金まがりがねの素封家海野寿作うんのじゅさく娘分むすめぶんである。脩は三十五歳、さだは明治二年八月九日生であるから二十歳であった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
お春さんは爺さんの娘分むすめぶんになって居る若い女だ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
その得意先とくいさきの一軒で橋場はしば妾宅しょうたくにいる御新造ごしんぞがお糸の姿を見て是非娘分むすめぶんにして行末ゆくすえは立派な芸者にしたてたいといい出した事からである。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)