ばあ)” の例文
むかし王羲之わうぎし蕺山しふざんといふところに住んでゐた頃、近所に団扇売うちはうりばあさんがゐた。六角の団扇で一寸洒落た恰好をしてゐた。
ばあは驚きたるなり。浪子もに落ちぬ事はあれど、言うは伯母なり、呼ぶは父なり、しゅうとは承知の上ともいえば、ともかくもいわるるままに用意をば整えつ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
朱の盤 (あわただしく遮る)やあ、ばあさん、歯を当てまい、御馳走が減りはせぬか。
天守物語 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その不折がやかましく言ひ立てる王羲之わうぎしは、大層鵞鳥が好きだつた。その頃近所にばあさんが居て、鵞鳥を一羽飼つてゐた。
幾姥いくばあは帰り候由。何ゆえに候や存ぜず候えども、実に残念の事どもに候。浪さんより便たよりあらばよろしくよろしく伝えらるべく、帰りにはばあへ沢山土産みやげを持って来ると御伝おんつたえくだされたく候。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
「おばあさん、見物をしていますよ。」
古狢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ばあさんはぶつくさぼやきながらも出て往つたが、町へ持つて出ると、色々な人がたかつて来た。
「すこし残しといてくれんとならんぞ——まめばあじゃないか、ねエ浪さん」
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)