大蜘蛛おおぐも)” の例文
丁度ちょうどそのときであった。金博士の頭を目がけて、一匹の近海蟹がざみのようによくえた大蜘蛛おおぐもが、長い糸をひいてするすると下りてきた。
見れば、それは廣介の云う通り、丁度雲に映った幻燈の感じで、一匹の金色こんじきに光った大蜘蛛おおぐもが、空一杯に拡っているのです。
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
けんにあまる壁を切りて、高く穿うがてる細き窓から薄暗き曙光しょこうが漏れて、物の色の定かに見えぬ中に幻影の盾のみが闇に懸る大蜘蛛おおぐもまなこの如く光る。
幻影の盾 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
羽毛はね布団の下から、真黒なものがむくむくと姿を現わした。それは一ぴき大蜘蛛おおぐもだった。
見開いた眼 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
大蜘蛛おおぐもの現れ小蜘蛛なきがごと
六百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
……筆勢ひっせいあまっておどし文句をつらねてはみたが、ここで金博士が、間髪かんぱつれず、顔にあたった大蜘蛛おおぐもを払いのけ、きゃあとかすうとかいってくれれば、作者も張合はりあいがあるのであるが、当の博士は