大禁物だいきんもつ)” の例文
「物の哀れはふんだんですよ。僕はどうも犯人の気持に同情するたちでしてね。わるいくせです。捜査活動に詩人的感情は大禁物だいきんもつです」
月と手袋 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「およしなさい、あなた。触っちゃ、いけません。脳の傷は恐しいのです。刺戟しげきを与えることは、大禁物だいきんもつですわ」
英本土上陸戦の前夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
さもないと施術の時臓腑ぞうふが膨脹して非常に困難だし、それに血管の動作が激烈だから出血しやすい。出血は施術に大禁物だいきんもつすこしでも出血したらモー施術が出来ん。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
軍師ぐんし威命いめいおこなわれず、命令が二からでて、たがいにこうをいそぐこと、兵法の大禁物だいきんもつである。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しくじつたり、吾は何気なく主人を先にしたるが、此処は夜会の場、例の男尊女卑は大禁物だいきんもつ、殊に青木子は済まなかつた、と思うても下司げすの智慧はあとで、後悔はさきに立たず。
燕尾服着初めの記 (新字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
阿爺ちちはそんな事は大禁物だいきんもつですから、できる事は頼まれなくてもできる、できない事は頼んでもできないと申して、はねつけてもはねつけてもやはりいろいろ名をつけて持ち込んで来ましたわ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)