大手町おおてまち)” の例文
市の目ぬきという大手町おおてまち通りは「参謀総長宮殿下」「伊藤内閣総理大臣」「川上陸軍中将」なんどいかめしき宿札うちたるあたりより
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
自分たちは外套がいとうの肩をすり合せるようにして、心もち足を早めながら、大手町おおてまち停留場ていりゅうばを通りこすまでは、ほとんど一言ひとこともきかずにいた。
毛利先生 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
変だから、列を右へはずして、向うを見ると、大手町おおてまちき当って薬師町やくしまちへ曲がる角の所で、行きづまったぎり、し返したり、押し返されたりしてみ合っている。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
白木屋しろきやで七階食堂の西向きの窓から大手町おおてまちのほうをながめた朝の景色も珍しい。水平に一線を画した高架線路の上を省線電車が走り、時に機関車がまっ白な蒸気を吐いて通る。
Liber Studiorum (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
昼飯をすませて少し休息すると、わずかばかりの紙幣を財布さいふに入れて出かける。三田みた行きの電車を大手町おおてまちで乗り換えたり、あるいはそこから歩いたりして日本橋にほんばしの四つかどまで行く。
丸善と三越 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)