大床おおゆか)” の例文
それにつれて、大床おおゆかの中ほどへすすみ出た観世清次は白の小袖に白地に銀摺ぎんずり大口袴おおぐち穿き太刀を横たえ、じょう仮面おもてをつけていた。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
御所の勝手知っている仲兼は土塀どべいを乗りこえ、大床おおゆかの下をって、法皇の御座まで進み、御座の切板の隙間から泰親の勘状を差しあげたのであった。
大床おおゆかひざまずく。控えたる侍女一、くだんの錨の杖を預る)これはこれは、御休息の処を恐入りましてござります。
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
彼は大床おおゆか階段きざはしの下で狐を射損じたために勅勘ちょっかんの身となった。その後いずこに忍んでいるとも聞かなんだが、さては山科に隠れていて、藻は彼の娘であったか。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
焔は荒い格子組こうしぐみのすぐ外まで来ているし、黒い火屑は大床おおゆかを吹きこがされて自分の膝のそばにも溜った。けれど、如何ともするすべもない。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ああ……」涙こそながさないが、範宴は全身の悲しみを投げだして、氷のような大床おおゆかしてしまった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
道場の奥なる貧しいだん阿弥陀像あみだぞうへまず拝をしていたのである。それを見ると、みな正成にならって、下へ坐った。——同勢七十余人、大床おおゆかはあらまし、いっぱいだった。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
質問者は大床おおゆかに居ながれた当夜の盲人三、四十人(例外として目あきの質問も出たかもしれぬ)と見てまちがいなく、答える方は覚一検校ひとりであったにちがいない。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
沍寒ごかん大床おおゆかは氷を張つめたようである。泥舟はりゅうと一さつ氷気をいて相手の影へ迫った。
剣の四君子:04 高橋泥舟 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だがもう内の大床おおゆかは黒煙をこめ、血か炎か、ピラピラ赤いものが眼を射るだけである。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
長政は、武者だまりの大床おおゆかをさして、自分の身も、大股に運んで行った。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして、天やや明るい廊の大床おおゆかのさきに、そのお姿を立たせられた。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大床おおゆかに居ながれた盲人四十余名は、やがて上座にある明石の検校の
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ふいにおもてをあげて、洞窟ほらあなのような大床おおゆかの人影をみまわした。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
工房の大床おおゆかのわきには、監督役人のいる袋部屋もある。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)