大山たいざん)” の例文
忍剣にんけんは、渾力こんりきをしぼって、それを引きぬこうとこころみたが、ぬけるどころか、大山たいざんにのしかかられたごとく一寸のゆるぎもしない。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大山たいざん鳴動して鼡一匹! これがよき例にござります! そうしてこれこそ我ら茨組の、最後の芸当にござります」
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
色青き大山たいざん鈍色にびいろ名無ななしをか
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
弓もつるを懸けたままでおくと、そのままゆるんでまいります。大山たいざんへ坐るには大悠たいゆうなれという通り、時には、御放心も必要でしょう。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大山たいざんしわに棲むものは、鳥獣ばかりとは限らない。彼女が駈け歩いた峰や沢や山畑の遠方此方おちこちから、忽ちにして、むらがり集まって来た人間は、二十名以上もある。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それあるのみと、彼はみずから剣を抜いて、左右百余騎の大将を督し、麾下数万の兵力を一手にあわせて、大山たいざんのおめき崩るるごとく蜀軍へむかって総攻撃の勢いに出た。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
八方筒抜つつぬけのむしろ小屋の事とて、当然、逃げるべきものは遁れ、避難する見物は避難して、あとに残ったのは小屋者の男衆のみで、大山たいざん鳴動して鼠一匹のかたちがないでもない。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
うしろには大山たいざんがそびえ、その麓をめぐる三十余里の官渡の流れは、自然のごうをなしている。曹操は、その水流一帯に、逆茂木さかもぎを張りめぐらし、大山の嶮に拠って固く守りを改めていた。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それよりも、九州の果て、長崎の文明、また新しい都府と聞くあずまの江戸、陸奥みちのく大山たいざん大川たいせんなど——遠い方にばかり遊心が動いています。生れながら私には、放浪癖があるのかもわかりません
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)