“填(つ)” の例文
……背中には革で作った哨楼(しょうろう)が太い革紐でしばり付けられて、その中から四人の射手が、松脂(まつやに)と麻緒を填(つ)めた火矢を投げるのであった。
大衆文芸作法 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
「善い事はないがちょっと愛嬌(あいきょう)があるよ。あれぎり、まだ填(つ)めないところが妙だ。今だに空也餅引掛所(ひっかけどころ)になってるなあ奇観だぜ」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「毛布だ! 毛布だ! 毛布を搬べ! 機関室昇口艙口から、毛布を填(つ)めろ! おうい、毛布を搬べ! 毛布を持って来い!」
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)
武田家再興のために、伝来の白旗や、兜や、巨額な黄金、宝珠を填(つ)めて、どこかへ埋めた「信玄の石棺」というものに……。
山彦乙女 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
次にその洋杖の柄を縦に二つに割ったが、それを見ると、中には筒に入ったレンズやその他いろいろな精巧らしい器具がぎっしり填(つ)まっていた。
千早館の迷路 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「卓子の向う前でも、砂埃(すなッぽこり)に掠(かす)れるようで、話がよく分らん、喋舌(しゃべ)るのに骨が折れる。ええん。」と咳(しわぶき)をする下から、煙草(たばこ)を填(つ)めて、吸口をト頬へ当てて
朱日記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
莨(たばこ)を填(つ)めては吸い填めては吸い、しまいにゴホゴホ咽(む)せ返って苦しんだが、やッと落ち着いたところで
深川女房 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
そして自分の身辺におらせて、煙草を填(つ)めさせ、茶を立てさせ、酒の酌をさせなどした。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
其の中(うち)に此(これ)はしまったと気が付いた。昨日乃公は何もする事がなかったから、此ストーブの煙筒(えんとつ)に土を填(つ)めて置いた。これでは燻ぶる筈だと思って消そうとしたが容易に消えない。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
そう言うと彼はブランディーの樽に腰を下して、パイプに煙草を填(つ)め始めた。
(コルクを填(つ)め、乙に向いて射撃す。乙、驚きたる表情をなす。)
朝霧を煮釜に填(つ)めて、跳起きられればよい!
山羊の歌 (新字旧仮名) / 中原中也(著)
召集されたとき買ったもので、戦地ではいちども使わなかったのだが、どうやらこんどは必要になったようだ、ケースを明けてみると弾丸が填(つ)まっていた。
四年間 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「ここに、鉛筆で使用法を書いときましたから、大急ぎで、消毒剤を填(つ)めて、皆に附けてあげて下さい」
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
今日は煙突に火薬を填(つ)めて破裂(はれつ)させた。その為めに座敷の道具が大分壊れた。お父さんもお母さんも乃公を叱るけれど、実際乃公が悪いか如何(どう)か、少し道理(わけ)の分る人に判断をして貰いたい。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
そして船長は泰然と彼を眺め、パイプに煙草を填(つ)め出した。
一人が火薬を填(つ)め、砲玉を入れ、他の一人が射手の位置につきました。
失蝶記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)