因循姑息いんじゅんこそく)” の例文
僕はあんな因循姑息いんじゅんこそくなお嬢さんは嫌いです、あなた方はあの人を花やかだなんて云われるけれども、何処に花やかなところがあるんです
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
あるいは因循姑息いんじゅんこそくのそしりをまぬかれないまでも、君侯のために一時の安さをぬすもうとはかるものがあり、あるいは両端をいだこうとするものがある。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
わが日本橋区の問屋町は、旧慣墨守きゅうかんぼくしゅ因循姑息いんじゅんこそくの土地だけに二、三年後にジワジワと水の浸みるようにはいって来た。でも私はびっくらした事がある。
我々ひそかに案ずるに、君は決してかかる忠告を聴く者に非ず。その忠告者をば内心に軽侮し、因循姑息いんじゅんこそく頑物がんぶつなりとてただ冷笑したるのみのことならん。
徳育如何 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
だいたいこれが、僕の因循姑息いんじゅんこそくからはじまったことだから、むろん、じぶんがいた種はじぶんでるつもりだよ。マヌエラも、僕と一緒によろこんで死んでくれる。
人外魔境:01 有尾人 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
しかし元来が親藩であったし、因循姑息いんじゅんこそくの藩士が多かったから、尊王撰夷などに、耳もかそうとはしないので、同志を募って、京洛に出でて、華々しい運動を起すというようなことはできなかった。
仇討禁止令 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
因循姑息いんじゅんこそくも時によります
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
れがすなわち尊王攘夷の始りで、幕府が王室に対する法は多年来何も相替ることはなけれども、京都の御趣意は攘夷一天張りであるのに、しかるに幕府の攘夷論は兎角とかく因循姑息いんじゅんこそくに流れてらちが明かぬ
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)