嚇怒かくど)” の例文
嚇怒かくどして播磨を衝き、次いで義政の許しを得ないで入洛じゅらくした。当時此の駄々ッ児を相手に出来るのは細川勝元だけであった。
応仁の乱 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
悟空には、嚇怒かくどはあっても苦悩はない。歓喜はあっても憂愁ゆうしゅうはない。彼が単純にこの生を肯定こうていできるのになんの不思議もない。
この異様な怒りかたは、病的にすら見えたが、臣賀でも他の召使でも、これを、不自然な嚇怒かくどとは、誰も見ない様子なのだ。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ことに彼は、不幸なる弱者が無慈悲なる強者のために無道の圧制に苦しむを見る時は、憤然としておのれがおもてつばきせられたるがごとくに嚇怒かくどする。
貧乏物語 (新字新仮名) / 河上肇(著)
鎌倉殿は、船中において嚇怒かくどした。愛寵あいちょうせる女優のために群集の無礼を憤ったのかと思うと、——そうではない。
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
三人は憤激してのぼせあがり嚇怒かくどのあまり敦圉とんぎょしてあらゆる手段と方法をもって小判奪取の努力を続けた。
くびのあたりを一と突きにやられ、床から拔け出し加減に血潮の中に縡切こときれ、境の唐紙を開けた次の長四疊には、薄暗い中に据ゑられた不動明王の木像が、嚇怒かくどの面相物凄く
銭形平次捕物控:130 仏敵 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
嚇怒かくどしてこれをしりぞけたために、事はさらに大きな波紋を起して、竜造寺長門の言を尤も至極となす者、断じて許すべからず厳罰に処すべしと憤激する者、二派に分れて揉みに揉んだ結果
矜持きんじそのもののような融川が弟子に鼻柱を挫かれて嚇怒かくどしない筈がない。
北斎と幽霊 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
戸口のところに陳東海が朱房の附きたる匕首を振翳ふりかざして立ちはだかり居るなれば、余りの理不尽に手前も嚇怒かくど致し、何をすると叫びながら組付行くに、そのあおりにて蝋燭の火は吹消え、真の闇となり
けれど、宗易が、余りに平然とそれをいったので、気をのまれて、その嚇怒かくども、ひとみの底に、ッと見えただけだった。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
翌、天漢てんかん三年の春になって、李陵りりょうは戦死したのではない。捕えられてに降ったのだという確報が届いた。武帝ははじめて嚇怒かくどした。即位後四十余年。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
鎌倉殿かまくらどのは、船中に於て嚇怒かくどした。愛寵あいちょうせる女優のために群集の無礼をいきどおつたのかと思ふと、——うではない。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
同時に当然のごとく退屈男が嚇怒かくどして、大声に叱咜しったでもするだろうと思いのほかに、その一語をきくや否や、期せずして凄艶せいえんな面に上ったのは、にんめりとした不気味この上ない微笑です。
五郎蔵をして嚇怒かくどさせた。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
と、忠兵衛は、かれの嚇怒かくどをおそれるどころか、かえって、ジリジリと膝を突きすすめた。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
笑而不答わらってこたえず——としていたことはもちろんであったが、ただいかに彼でも、信長が自分を誤解ごかいして一たんの嚇怒かくどに何らの反省も加えず、秀吉に使者を立て、また竹中半兵衛に命じて
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
浄海入道は、それを知ると嚇怒かくどして福原から京都に入り、以仁王を土佐へ流さんものと、武将に命じて、御所へ向わせたが、何ぞ知らん、命をうけた武将の中に頼政の二男兼綱もいたのである。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼の口から、仔細を聞いて、嚇怒かくどしたのは、袁術であった。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たれしも、信長の嚇怒かくどを、そう推察していた。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
兗州えんしゅうの曹操は、変を聞いて、嚇怒かくどした。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
鹿之介は、聞くと、なおさら嚇怒かくどして
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)