同朋町どうぼうちょう)” の例文
二人は肩を並べるように、中坂なかざか同朋町どうぼうちょうの方へ降りたのですが、妙に話の継穂つぎほを失って、しばらくは黙りこくっていたのでした。
そしてけさ梅が綺麗きれいふるった灰を、火箸で二三度掻き廻したかと思うと、つと立って着物を着換えはじめた。同朋町どうぼうちょうの女髪結の所へ往くのである。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
と事を分けての話に文治もおおいに悦んで、帰り掛けに柳橋の同朋町どうぼうちょうに居るお村の母親お崎ばゞあの所へ参りました。
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
神田・同朋町どうぼうちょう。さらに晩秋には、神田・和泉町いずみちょう。その翌年の早春に、淀橋よどばし柏木かしわぎ。なんの語るべき事も無い。朱麟堂しゅりんどうと号して俳句に凝ったりしていた。老人である。
わいわい言いながら笠森稲荷の前から同朋町どうぼうちょうは水野大監物だいけんもつの上屋敷を通って、田町の往還筋へ出たころから、ぽつぽつ降り出した雨に風さえ加わって、八つ山下へ差しかかると
暢気のんきなもので別れて行った。意を了して、その頃同朋町どうぼうちょう店借たながりをしていた長屋に引返ひっかえして、残りの荷物をまとめたが、自分の本箱やら、机やら、二人のりには積み切れないで、引越車をまた一輛。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いくらも歩かないうちに、——御数寄屋町と同朋町どうぼうちょうの間の、狭い横町を太兵衛は指します。
数寄屋すきや町、同朋町どうぼうちょうの芸者やお酌が大勢来た。宴会で芸者を見たのはこれが始である。
ヰタ・セクスアリス (新字新仮名) / 森鴎外(著)
同朋町どうぼうちょうから金沢町、夜眼にも光る霙のなかを駕籠は御成街道おなりかいどうへさしかかった。
親分さん——ととさんの出入りの御屋敷で御目見以上というと、三軒しかありません。一軒は金助町きんすけちょう園山若狭そのやまわかさ様、一軒は御徒士町おかちまちの吉田一学いちがく様、あとの一軒は同朋町どうぼうちょう篠塚三郎右衛門しのづかさぶろうえもん
同朋町どうぼうちょうの山崎屋の隠居勘兵衛に、さんざんの目に逢わされた一両二分、死んでからでも返してしまったら、さぞ清々するだろうといった、そんな事しか考えていなかったのですが、行ってみると