半蓑はんみの)” の例文
すると、突如、大銀杏おおいちょうの木蔭から、竹ノ子笠を眉深まぶかに、身には半蓑はんみのをまとった武士が、つばめのごとく、公卿の傘へ、体当りにぶつかッて逃げた——。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
入り口の壁の内側には半蓑はんみののかかっているのも山家らしいようなところだ。やがて半蔵は驚いたように二階から降りて来て勝重を下座敷へ迎え入れた。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
しかし、半蔵はもう背中に半蓑はんみのをつけて、敷居の外へ一歩ひとあし踏み出していた。尾州藩の一隊は幾組かに分かれて、本陣に昼食の時を送っている家中衆もある。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
着ている半蓑はんみのは針のように逆立った。兵が「——またか」と叫んでいたのは、もしか自分の来る以前に、宮はすでに警固の士に見つかっていたことなのではあるまいか。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
幸いなことに——そのとき彼のそばをすれちがった半蓑はんみのに旅笠の男が、ふと
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
竹の皮笠に、半蓑はんみのを着、手に管鎗くだやりを持った男が、白い歯を見せてからかった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
笠やみのを取って、大覚へ着せ、彼も半蓑はんみのに竹笠をかぶった。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)