北冥ほくめい)” の例文
あの鯤という言葉は、支那の『荘子そうし』という本の一番始め、逍遥遊篇第一というところに出ている。その文句は〈北冥ほくめいに魚あり、その名を鯤となす。
「親分、北冥ほくめいの魚でしょう。こいでもふなでも構わないが、ここに魚がありさえすりゃ、三万両と転げ込むんだが、無住になった寺方じゃ、いわしの頭もねえ——」
「親分の、北冥ほくめいの魚でせう。鯉でもふなでも構はないが、此處にさかながありさへすりや、三萬兩と轉げ込むんだが、無住になつた寺方ぢや、いわしの頭もねえ——」
その文句は『北冥ほくめいに魚あり、その名を鯤となす。鯤の大さ幾千里なるを知らず』と——ある