出所しゅっしょ)” の例文
唯ここに一つの疑問として残されているのは、池崎の中間どもが清水山に犬を入れてくわえ出させたという、かの怪しい箱の出所しゅっしょである。
半七捕物帳:43 柳原堤の女 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
このじょと申すのが取りも直さず公徳の出所しゅっしょである。私も人間であるから時には大きな声をして歌などうたって見たくなる事がある。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その出所しゅっしょのいずくなるをしばらくとするも、とにかく『海底軍艦』などの科学小説がその頃現れ、読者の血を湧したことは厳然げんぜんたる事実であって
『地球盗難』の作者の言葉 (新字新仮名) / 海野十三(著)
買いたいは理の当然されば男傾城おとこけいせいと申すもござるなり見渡すところ知力の世界畢竟ひっきょうごまかしはそれの増長したるなれば上手にも下手にも出所しゅっしょはあるべしおれが遊ぶのだと思うはまだまだ金を
かくれんぼ (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
「誰でもいいではないか。それよりも、印籠の出所しゅっしょを仰っしゃい」
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
よそながら其の品の出所しゅっしょをたずねると、牛込赤城下あかぎしたのある大身たいしんの屋敷から内密の払いものであるが、重代の品を手放したなどということが世間にきこえては迷惑であるから
半七捕物帳:27 化け銀杏 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
比丘尼びくにが木魚の音を聞き分けるごとく、椽の下からでも音さえたしかであればすぐ禿頭だなと出所しゅっしょを鑑定する事が出来る。「そこでちょっと君をわずらわしたいと思ってな……」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
けれどもお重はただ意地の悪い微笑をらすのみで、けっして出所しゅっしょを告げなかった。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)