六浦むつら)” の例文
まして、執権御所の近火とあっては、六浦むつら腰越こしごえの遠くからさえ、この夜、駒にムチを当てた武士が少なくなかったことであろう。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この男を見た時に、「霜夜鐘しものよのかね」の芝居に出る六浦むつら正三郎というのはこんな人だろうと思った。その時に彼は半紙に向って「……茶立虫ちゃたてむし」と書いていた。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
昔こゝ六浦むつらとよばれ汐干狩しおひがり
五百五十句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
早や鎌倉もからっぽとはつゆさとらず、なお、むなしい死守を六浦むつら街道や武蔵口などのふせぎにかけて、かなしいつわものごうにおめいていたのであった。
登子と侍女たちの四、五人は、あの鎌倉陥落の前夜、紀ノ小市丸の知らせで、北条守時の戦死を知り、やつの隠れ穴から山づたいに六浦むつらの方へさまよい出て、武州金沢の称名寺へかくれていた。
屋敷裏の丘は、六浦むつら越えの山波へつづいている。兄弟は秋草の中に岩を見つけて腰かけた。野ぶどうの実が、足もとに見え、ひよが高啼く、もずの音が澄む。——ふたりの胸に幼時の秋が思い出された。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
六浦むつら冠者かんじゃ一郎丸」
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)